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POLARBEARが目指す物理

インフレーション
重力レンズ効果
CMBと偏光

インフレーション

 私たちはインフレーション理論のエネルギースケールを決定することを目標としています。インフレーション理論というのは宇宙がかつて指数関数的な膨張をしたという理論です。そのとき銀河間の空間は光よりも早く膨張し、宇宙の殆どが観測できる領域の外にまで広がりました。宇宙物理学には平坦性問題と地平線問題という重要な問題が存在し、それらを解決するのがこのインフレーション理論です。

 インフレーションの物理は加速器では到達できないほどの高エネルギーで起こっていると考えられています。また、そのエネルギースケールでは自然の全ての力が統一されると考えられており、素粒子物理・宇宙物理両面においてその検証が期待されています。POLARBEARはこのインフレーション理論の痕跡をCMB偏光を用いて見ることができます。

重力レンズ効果

 宇宙の発展は重力不安定性に則っています。そしてそれによって小さな初期のゆらぎが重力の影響によって成長し、銀河を作り、そして宇宙の大規模構造を形作ります。この、大規模構造は、ニュートリノの質量や、真空のエネルギーなどの多くの要素によって影響を受けます。CMB偏光には重力レンズ効果によって大規模構造の影響が反映されています。POLARBEARは大規模構造の影響を見ることによってニュートリノ質量やダークエネルギーについて制限を与えようとしています。

CMBと偏光

 宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background :以下CMB)の研究は宇宙論の深遠な秘密を解き明かし、そして私たちの宇宙の構成要素の正確な観測を提供します。初期宇宙からくる化石としてのCMBの発見は、ビッグバン理論の強い証拠となっています。CMBの衛星観測は初期宇宙が限りなく一様であるということだけでなく、小さなゆらぎが重力によって銀河クラスターへと成長したということを見つけました。さらなる衛星観測は私たちが今理解している標準的な宇宙論を驚くべき精度で実証し、宇宙年齢と宇宙に存在する物質の量を測ることができました。

 CMB科学における次のフロンティアはその偏光を正しく精密に測ることです。CMBの偏光は、ビッグバンの後に物質との相互作用から自然に出てくるものです。CMBの偏光は、2つのパターンに分けることができます。ひとつはEモード、もうひとつはBモードと呼ばれるものです。Eモードの分布は既に発見され、そのパターンがよく調べられています。しかし、BモードはEモードよりもはるかに小さい強度を持つので、まだ誰も観測するに至っていません。

 POLARBEARは、Bモードの弱いシグナルをとらえるように設計されています。私たちは検出器の多素子化を行い、また、空からくる(CMBにとっては)ノイズとなる空からのシグナルが最も少ない空の領域を選んで観測を行います。

下の図はCMBの偏光の空間分布をフーリエ変換して得られるものの理論予想です。 これらを測定して、ニュートリノ質量や、インフレーションのエネルギースケールなどを検出します。